今年は明治学院創設者ヘボン博士生誕200年記念の年にあたり、明治学院大学キリスト教研究所と明治学院同窓会の後援をいただきながら、当ゼミ主催による「朗読劇『誇る者は主を誇れ』― ヘボンと是清―」を2015年11月28日(土)明治学院小チャペルにて上演しました。当日は快晴に恵まれ、86名という多くの方々にご来場いただきました。小チャペルの中は、荘厳な雰囲気に包まれ、あたかも時は1800年代、1900年代初頭にタイムスリップしたかのようなステージでした。
脚本を書いた、にいくらせいこさんはゼミ生で、中島先生ご指導のもと、『ヘボン在日書簡全集』を中心にヘボン研究に取り組み、戯曲を創作されました。これはゼミにおける大きな成果と考えます。
今回の上演に先立ち、ゼミ活動の一環として2014年12月17日に先生とゼミ生で朗読会を行いました。その後、ゼミ生間に是非他の方々にもお伝えしたいという思いが高まり、有志で練習を始めました。やがて、本格的に上演を目指すことになり、本学卒業生で演劇部OBであり、現在は劇団民藝の演出家をされている兒玉庸策氏に演出を依頼しました。メインキャストのヘボン博士役は明治学院大学学長補佐の岩谷英昭さんが引き受けてくださいました。演劇部OBが2名、ゼミからは5名が出演。他のゼミ生は準備の段階等で協力しました。
インブリー館二階における9回の練習を重ねるうちに、間の取り方、発声の強弱、役の人物の背景を想像すること、行間を読み取ること等、各人の課題が次から次へと出てきました。いつも兒玉氏の的確なご指導をいただきました。
ヘボン博士は米国長老教会伝道局から宣教医として派遣され、1859年10月18日にクララ夫人を伴なって神奈川に上陸しました。1863年にヘボン塾を開校し、当塾からは高橋是清をはじめ、林董、益田孝、鈴木知雄、三宅秀、佐藤百太郎、早矢仕有的、沼間守一など、政界、実業界、医学、教育の分野など多方面で活躍された方々を輩出しました。同博士は、医学生教育と施療を担当し、ヘボン塾での英語教育は主に同夫人によるものでした。生徒たちは同夫人から愛情深く教育を受け、本当の母親のような存在だったようです。
帰国後、ニュージャージー州イーストオレンジに隠居された同博士は、訪れた高橋是清に言いました。それはパウロの言葉「誇る者は主を誇れ」でした。「たとえあなたが日本の頂点に立っても、それは主があなたを用いてくださっているのだから常に主に感謝して、誇る者は主のみである」と。日本における同博士の数えきれないほどの業績は、そして日本人への愛は、すべて主のお導きだと同博士は言われているのです。
劇中で矢野隆山は宣教師 J・H・バラから洗礼を受け、日本のプロテスタント信者第一号になったとき、「初穂」という言葉がありました。私たちのこの朗読劇も同博士を敬愛し、多くの方々に伝えていくという意味において、私たちの中では初穂かも知れません。
そして最後の場面は特に感動的でした。同博士を囲み、送る言葉が述べられた後、ロバート・ブラウニングの神聖な詩の朗読がありました。その後、出演者全員による讃美歌403番を歌う場面では、グリークラブの現役学生、OBOGの方々のコーラスが加わり、その聖なる調べは満場の皆さまの心に届けられました。
ヘボン博士と、最高のパートナーであり生涯の同労者であるクララ夫人がキリスト教禁教の日本で種を蒔かれ、豊かな実りを得た時のことを知り、明治学院に学んだ私たちは「ヘボンの子」として、この教えを継承していかなければならないと思います。
最後に、多くの方々のお力添えにより、朗読劇を上演できたことを感謝いたします。(クララ夫人役兼記録係:舎人和子)