中島耕二ゼミ「ヘボンの手紙を読もう会」第69回キリスト教史学会大会に参加 (ヘボン塾講座有志の会)

 

当ゼミは設立して6年半が経とうとしています。その間、元本学客員教授の中島耕二先生のご指導のもと、J.C.ヘボン博士、S.R.ブラウン博士、G.F.フルベッキ博士、W.インブリー博士、H.ルーミス博士の各書簡集あるいは伝記類の輪読と適時フィールド・ワークを実施してきました。現在は「横浜の女性宣教師たち」について学んでいます。

今回は、中島先生が研究発表された「第69回キリスト教史学会大会」にゼミ生として参加したので報告させていただきます。

 開催日時や会場並びに次第など概要は下記のとおりでありました。

 日時:2018年9月14日(金)~ 15日(土)

会場:(第1日)日本基督教団 金沢教会(第2日)北陸学院中学校・高等学校

次第:(第1日)開会式、研究発表Ⅰ、写真撮影、総会、キリスト教史学会賞授与および記念講演、シンポジウム、講演会

       (第2日)研究発表Ⅱ、研究発表Ⅲ、パネルディスカッション、閉会式

参加者:約100名

 そのうち、研究発表Ⅰの部で中島先生が「青木仲英―金沢教会初代牧師―」と題して発表された内容をレジュメから抜粋しその骨子をご紹介いたします。

 (研究発表の経緯)

中島先生は日本キリスト教史研究には宣教師の働きを再検証することが不可欠との思いから研究を始めたところ、明治期の地方伝道に大きな功績を残した牧師の一人として青木仲英の存在を知った。しかし、何故か『日本キリスト教歴史大事典』(教文館、1988)に彼の名がないことから、調査を開始し長い年月をかけて青木牧師のご子孫を探り当て、各家に保存されていた貴重な史料を入手し、加えて青木牧師のすべての伝道地を訪ね現地調査を行い、今回実証に基づいた研究発表をされた。

 (序論)

日本基督一致金沢教会の初代牧師を務めた青木仲英(1858~1943)は、生涯を地方の開拓伝道に捧げたが、元来中央にあって教会の指導者として活躍し得る人物であった。では何故、彼が地方伝道者として生涯を送ることになったのか、その働きにもかかわらず『日本キリスト教歴史大事典』(教文館、1988)に何故彼の名がないのか、その理由について、青木仲英の生涯を辿ることによって解明を試みたい。

(本論)

1.出自と教職者への道

青木仲英は安政5年4月28日(1858年6月9日)、武州岩槻藩江戸詰家老青木仲卒の長男として生まれ、上級武士の親族などに囲まれながら育てられた。仲英はアメリカ長老教会宣教師のカロザース、O.M.グリーンおよびインブリーらから指導を受け教職者になることを決心し、明治12(1879)年に東京一致神学校(明治学院の前身)に入学した。明治14(1881)年には神学生夏季伝道として、トーマス・ウィン宣教師を助け金沢、七尾、富山、高岡等北陸一帯で伝道奉仕をしている。翌明治15年6月に同神学校を卒業した。明治16(1883)年には按手礼を授けられている。

2.金沢教会初代牧師

明治18(1885)年4月には母、妻、長男、長女、弟二人とともに金沢に向け出発し、金沢教会初代牧師に就任した。在任中は金沢女学校(現北陸学院)第二代校長、浪花中会議長を務め、真宗勢力の牙城のなか教会員を増やしている。

3.地方開拓伝道

その後明治21(1888)年5月から大正4(1915)年4月まで27年間の長きに亘り家族帯同のもと、大阪、神戸、和歌山、高知県中村、徳島県池田、福井等次々と地方開拓伝道に仕え、行く先々で信徒を増やしていった。隠退教師となった後も、徳島県鷲敷で大正13(1924)年まで10年間奉仕をした。しかし、その地で妻のゑいを亡くしている。

(結論)

青木仲英は各地で大きな伝道成果を上げ、中央の教会に戻る条件は整っていた。しかし、その機会は得られなかったことは、仲英が長老教会出身者であることと関係している。当時、中央にあって日本基督教会をリードしていた植村正久や井深梶之助らは改革教会出身者であり、彼らとは教会観をはじめいろいろな面で意見を異にしていたことが挙げられる。すなわち、教派主義と超教派主義の問題、教会執行部の都市部伝道重視政策への反対など伝道に対する根本的な違いによるものであった。また、『日本キリスト教歴史大事典』に青木仲英の名が掲載されていないことは、日本キリスト教史研究者が伝道現場に注目してこなかったことを意味している。

 (中島先生からの指摘など)

キリスト教信徒が減少し今後ますます教勢が厳しいなか、この傾向を打開するためには青木仲英が実践したような地道な伝道活動が重要である。また、日本キリスト教史研究者は同様な視点から、数多くの先人牧師の働きを系統立てて調査研究することが必要であり、今後欠かせない作業である、と。

なお、同発表会場には史料を大切に保存し中島先生に提供された、青木仲英牧師の曾孫の方3名(うち1名は私達のゼミ生)とその家族が出席され皆様に紹介されました。

 (大会に参加して思ったこと、感じたこと)

各先生方の地道な史料収集や調査に基づいて纏められた研究内容を拝聴し、物の考え方、捉え方を改めて学ぶことができ非常に勉強になりました。また、内容を深耕しながら探求するひた向きな姿勢にも感動しました。さらに、記念講演、シンポジウムおよびパネルディスカッションでは幅広く知識を修得させていただきました。感謝申し上げます。

 (世話人:海瀬春雄)

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                                    (写真:金沢教会)                                        (写真:北陸学院ウィン館)