中島耕二ゼミ「ヘボンの手紙を読もう会」第11回外国人居留地研究会全国大会に参加 (ヘボン塾講座有志の会)

当ゼミは、元本学客員教授の中島耕二先生のご指導のもと、設立して6年半が経過しました。今回はゼミ活動の一環として「第11回外国人居留地研究会全国大会」(初日)にゼミ生8名が参加したので報告させていただきます。

開催日時や会場並びに次第など概要は下記のとおりでありました。

日時:2018年11月3日(土)13:00 ~ 17:15

会場:聖路加国際大学 アリスホール

           東京都中央区明石町10-1

テーマ:「居留地と女子教育」

次 第:

             (第一部)

             主催者挨拶    NPO法人築地居留地研究会理事長 水野雅生

             ご挨拶        東京都中央区区長 矢田美英

             ご挨拶      聖路加国際大学学長 福井次矢

             基調講演     東京女子大学教授 小檜山ルイ

                                             「居留地という空間と女性」

 

            (第二部)

            居留地代表者発表 テーマ「居留地と女子教育」

            コーディネーター 中島耕二 築地居留地研究会理事

                                             ①函館 酒井嘉子 はこだて居留地研究会会員

                                             ②東京 伊藤泰子 築地居留地研究会理事

                                             ③横浜 斎藤多喜夫 横浜外国人居留地研究会会長

                                             ④川口 杉山修一 プール学院学院長

                                             ⑤神戸 佐伯裕加恵 神戸女学院史料室

                                             ⑥長崎 姫野順一 長崎居留地研究会会長

                                             ⑦新潟 山田耕太 敬和学園大学学長

             シンポジウム   コーディネーター 中島耕二

                                               シンポジスト 各居留地発表者

             閉会挨拶

            次回開催地挨拶  斎藤多喜夫 横浜外国人居留地研究会会長

 

参加者:約320名

内容の要旨は次のとおりでありましたのでご紹介いたします。

 

 (外国人居留地とは*)

 江戸幕府は、1858(安政5)年の日米修好通商条約をはじめとしてイギリス、フランス、ロシア、オランダと修好条約を締結した。これは「安政の五カ国条約」と総称されている。この条約では、箱館(現・函館市)、新潟、神奈川(現・横浜市神奈川区)、兵庫(現・神戸市兵庫区)、長崎の5港を開港、および東京(築地)と大坂(川口)を開市して、外国人の居住と貿易を認めた。しかし、実際に開港されたのは、神奈川の場合は横浜村(現・横浜市中区)であり、兵庫の場合は神戸村(現・神戸市中央区)であった。この条約により外国人が一定区域の範囲で土地を借り、建物を購入し、あるいは住宅商館を建てることが認められた。また、居留地の外国人は、居留地の十里(約40km)四方への外出や旅行も自由に行うことができた。この外国人居留地は、条約改正により1899(明治32)年に廃止されるまで41年間存続した。

   *同大会では当概要は基本的なことであり、理解していることを前提に詳細な説明は省略されたので、ここでは補足説明を加えた。

 

(第一部:基調講演)

「居留地という空間と女性」と題して、外国人居留地と女性に関しては、①居留地に対して日本側が提示した「女性」:遊郭と現地妻、②居留地に対して「西洋」が提示した「女性」:アメリカの白人中流女性などを例示しながら詳細に説明が行われた。さらに宣教師と「ホーム」の発信源としての居留地に関しても論じられた。すなわち、「居留地は、教育の揺籃の場であった。それは1890年代以降の官製良妻賢母教育が参照対象とした女子教育であったし(この2種の教育は似て非成るものであったが)、二〇世紀に入って大衆化される『主婦像』の原型を提供したものであった。」と結ばれた。

 

(第二部:各居留地代表者による発表とシンポジウム)

「居留地と女子教育」にスポットを当て、それぞれの居留地における宣教師(個人あるいは宣教師団)、いわゆるミッションによる女子教育が、日本の近代化とともにどのように展開され、またどのような社会的影響を与えていったかを各居留地の一校を例示して発表された。その対象とされた学校名は以下のとおりであった。

   函館:遺愛女学校、東京(築地):立教女学校、横浜:共立女学校

   大阪(川口):プール女学校、神戸:神戸女学院

   長崎:活水女学校、新潟:新潟女学校

なお、シンポジウムでは各居留地発表者は、先に発表した内容を掘り下げ、各校の特徴ある卒業生について、個人を対象にその足跡を追いミッション・スクールで受けた教育がどのように社会生活に活かされて行ったか事例報告を行い、コーディネーターはそれぞれに短いコメントを加えた。

最後にコーディネーターは「各居留地において宣教師が教えた内容は、女性に自立を目覚めさせ、多くの海外留学生の輩出をもたらし、日本の近代化に大きく貢献した。」と結ばれた。

 

(大会に参加して思ったこと、感じたこと)

基調講演では多角的な視点からの考察を拝聴し大変勉強になりました。各居留地代表者による発表とシンポジウムについては、それぞれの皆様が当該居留地に非常に誇りを持って深く研究されていることが感じられ、新しい知識を修得させていただきました。

本当にありがとうございました。感謝申し上げます。

なお、横浜での開催予定の次年度大会もぜひ参加したく思っています。

 

(付記)

『わたしの家族の明治日本』(文藝春秋、2018年10月)を刊行されたジョアンナ・シェルトン女史をご紹介いたします。

同女史は、1877(明治10)年に長老教会宣教師として来日し25年間日本伝道に生涯を捧げた曽祖父トーマス・T・アレキサンダー博士に強い共感を覚え、日本に何度も来られ、博士ゆかりの地・施設・人々を訪ねながら取材を重ね、関連史料や文献も探し求め、念願であった伝記を完成させ、2015年11月にアメリカで同書を出版した。同博士が築地大学校(明治学院の前身)教授・舎監、明治学院神学部教授として、築地居留地に11年弱住んだことから、同女史は2016年9月に築地居留地研究会においてアメリカでの同書出版の報告を兼ねて特別講演をされた。そして、今回は同書の日本語版の出版を機に再来日し、同大会にも特別ゲストとして参加された。同女史はアメリカ政府経済官僚として最年少で経済開発機構(OECD)の事務次長を務め、現在はモンタナ大学で客員教授をされている。

(世話人:海瀬春雄)

 img01 ヘボン塾講座有志の会写真

 

 

 

 

 

 

 

 

(写真:聖路加国際大学)