中島耕二ゼミ「ヘボンの手紙を読もう会」ワークショップ「ラトガース大学出身の在日宣教師たち」に参加 (ヘボン塾講座有志の会)

当ゼミは、元本学客員教授の中島耕二先生のご指導のもと、2012年4月に活動を開始し、9年4か月が経過しました。その間、J.C.ヘボン博士、S.R.ブラウン博士、G.F.フルベッキ博士、W.インブリー博士、H.ルーミス博士、横浜の女性宣教師たち、J.H.バラ博士、T.T.アレキサンダー博士の各書簡集や伝記類の輪読、フィールド・ワークの適宜な実施、朗読劇の上演、並びにキリスト教史学会大会、外国人居留地研究会全国大会など各研究会に随時参加しながら学習活動を続けてきました。
2020年1月からは、横浜指路教会 教会史編纂委員会編『G・W・ノックス書簡集』(キリスト新聞社、2006年)の輪読をスタートしましたが、同年3月以降コロナ禍のため休講を余儀なくされています。その代替として現在は、eメールによる「ゼミ通信」を寄稿し合いながら、中島先生及びゼミ生間のコミュニケ―ションを図りつつ、コロナ禍収束後の活動に備えています。

この度は、Zoomによるワークショップ「ラトガース大学出身の在日宣教師たち」(ラトガース大学アジア言語文化学科プロジェクト “Rutgers Meets Japan”)に、ゼミ生5名が参加したので報告させていただきます。

日時:2021年8月5日(木)13時00分 ~ 16時40分
開催方法:オンライン(Zoom) ※フェリス女学院歴史資料館から中継
講師:中島耕二先生(フェリス女学院歴史資料館研究員)
   辻直人先生(和光大学現代人間学部教授)
   小檜山ルイ先生(東京女子大学現代教養学部教授)
司会:若林晴子先生(ラトガース大学アジア言語文化学科助教授)
参加者:61名

スケジュール:
13:00 ~ 若林晴子先生 趣旨説明
13:10 ~ 中島耕二先生
    ラトガース大学の卒業生の日本における系譜とその働き(前半)
    ― バラ、スタウト、ブース、ワイコフ、デマレスト
14:00 ~ 辻直人先生
    ラトガース大学の卒業生の日本における系譜とその働き(後半)
    ― ハリス、スカッダー、シェーファー、ダルイー、シェンク
15:15 ~ 小檜山ルイ先生
    E.S.ブースとフェリス・セミナリの教育
16:15 ~ 全体質疑
16:40   終了

内容が多岐にわたりますので、中島耕二先生と辻直人先生による「ラトガース大学の卒業生の日本における系譜とその働き」(前半、後半)に限定して報告いたします。また、講演内容は項目のみとし、質疑応答内容についても省略します。


(中島耕二先生)
テーマ:ラトガース大学の卒業生の日本における系譜とその働き(前半)
<はじめに>
・ラトガース大学の所在地 ・私のラトガース・コレクション ・最初の5人のラトガース大学卒業来日宣教師 ・初期来日ニューブランズウィック(NBW)神学校卒業生
<本論>
J.Hバラ
・10人兄弟姉妹の二男 ・出自 ・初代ラトガース大学OB来日宣教師 ・草鞋履き開拓伝道 ・直接伝道のパイオニア
H.スタウト
・スタウトの来日まで ・長崎ステーション ・神学教育と九州伝道 ・神学部の盛衰・失意と帰国、晩年 ・在日中の奉仕
E.S.ブース
・出自 ・長崎・横浜・帰国 ・長老教会の出身
M.N.ワイコフ
・第一次来日まで ・お雇い教師時代 ・教育宣教師として来日 ・宣教師としての働き
N.H.デマレスト
・来日まで ・神学教育 ・帰国後本国で牧師 ・再来日と挫折
<5人のまとめ>
1.5人とも農家出身、M.N.ワイコフとN.H.デマレストは富農の出身。長老教会来日宣教師は職業家庭(医師、弁護士、牧師、政治家など)出身者が多いのと対照的。
2.任務は伝道と教育に集中している。
3.政治的活動は行わず、宗派には寛容である。彼らの個性的・自由度が高い伝道活動は、 日本の教会形成に大きな思想的影響を与えた。

(辻直人先生)
テーマ:ラトガース大学の卒業生の日本のおける系譜とその働き(後半)
<はじめに>
・改革教会来日宣教師の概要 ・宣教地の拡大(北日本ステーション、南日本ステーション) ・初任地別宣教師数推移など。最初の5人のラトガース大学卒業来日宣教師につぐ5人を紹介。
<本論> 以下の5人の宣教師を説明
H.ハリス 在日21年
F.S.スカッダー 在日10年
L.J.シェーファー 在日26年
E.C.ダルイー 在日5年
H.W.シェンク 在日7年
<おわりに>
1.5人の宣教師の日本での宣教活動は、初期来日宣教師の在日年数に比べ相対的に短い。
2.L.J.シェーファーは、戦前から教会や学校で宣教活動をしており、戦後においても引き続き復興活動をしている。
3.日本での宣教活動を終え、帰国後における米国での活動は米国オランダ改革教会に拘っていない。
4.日本とラトガース大学とのキリスト教を介した関わりは、L.J.シェーファーの働きを 除き、戦前出身者では1923年に来日したE.C.ダルイー以降はいない。
5.彼等にとって、日本宣教活動をどのように経験し、何を得たであろうか?今後の研究課題としたい。

【ワークショップに参加して理解したこと】
米国オランダ改革教会ミッションが1859年から1939年までに派遣した来日宣教師の内訳は、男性宣教師43人、同夫人34人、女性宣教師53人、不明2の計132人であった。そのうち、今回のワークショップで取り上げられたラトガース大学出身者の宣教師は男性10人である。
同宣教師たちの任務は伝道と教育に集中していた。その10人のうち7人は、明治学院(前身校を含む)にゆかりがあることを学んだ。その7人を紹介いたします。なお、後段3人の存在は今回初めて知りました。
  J.H.バラ(バラ塾、植村正久、山本秀煌、熊野雄七らに授洗、横浜先志学校主宰、明治学院理事)
 H.スタウト(スタウト塾、瀬川浅、留川一路らに授洗、東山学院創立)
 M.N.ワイコフ(横浜先志学校校長、東京一致英和学校教授、英和予備校教授、明治学院 普通学部教授)
 H.ハリス(東京一致英和学校教授、英和予備校教授、明治学院普通学部教授)
 F.S.スカッダー(明治学院高等学部・神学部教授)
 L.J.シェーファー(明治学院神学部・高等学部教授)
 E.C.ダルイー(明治学院中学部・高等学部・高等商業部教授)

【ワークショップに参加して思ったこと、感じたこと】
講師をされた中島耕二先生及び辻直人先生は明治学院大学OBであり、頼もしく思いながら拝聴させていただきました。そして、オンライン(Zoom )講演という制約の中、貴重な 内容を分かり易く教授していただき非常に勉強になりました。
上記7人の宣教師は明治学院の礎を築かれた大恩人であり、現在も母校で学びの機会与えていただき「人の道を学べる」ことは、宣教師の皆様のお陰であると感謝しております。
しかし、一本学卒業生として次のように素朴な疑問を抱きました。
《今回の同プロジェクトに本学院として共催あるいは後援を何故されなかったかです。ワークショップの内容の多くは、明治学院に関わる内容でした。》
最後になりましたが、コロナ禍にも拘わらずこの機会を得、中島耕二先生及び辻直人先生はじめとした各先生並びにフェリス女学院歴史資料館の皆様に感謝申し上げます。誠にありがとうございました。
(世話人:海瀬春雄)

ラトガース大学、ワークショップフライヤー(ワークショップのお知らせ)